インタビュー:国産の新型半導体量子コンピュータ試作プロジェクトのOpen Silicon Quantumとは?

ビジネスインタビュー


今回、Open Silicon Quantumと呼ばれる新しい取り組みが注目されているというので、取り組みを主導しているblueqat社湊氏にインタビューを行った。

 

blueqat株式会社

代表取締役社長

湊雄一郎氏

 

半導体量子コンピュータについて


ーこんにちはよろしくおねがいします。今回はハードウェアに関して新しい試みをされているということで、お話を聞かせていただければと思います。


湊氏:よろしくお願いいたします。



ー早速ですが、取り組まれているOpen Silicon Quantumとはどのような活動なのですか?


湊氏:はい。Open Silicon Quantumは新しい量子コンピュータを産業化を目指して作ろうというハードウェアと周辺機器の開発プロジェクトとなっていて、名前の通りオープンに様々な企業様が参加できるようにしています。新型の半導体量子コンピュータと呼ばれる方式を採用しています。



ー半導体量子コンピュータというのはどのようなもので、今までの量子コンピュータとはどのように違うのですか?


湊氏:量子コンピュータは使う量子の種類によって大別することができます。例えばよくニュースで取り上げられる超伝導タイプは電子を対にしたクーパー対を使っています。米国で話題になっているイオントラップや冷却原子は原子核をイオン化したものや、原子そのものを使っています。また、最近光量子コンピュータと呼ばれる別方式が話題になっていますが、それは光子を使っています。半導体量子コンピュータでは、「電子」を使って計算を行う方式です。


今までの量子コンピュータとの違いは、技術的な違いなどがたくさんありますが、大きいのはビジネス的な違いで、小型化や集積化が得意といわれていて、ビジネス的な観点から今回半導体型の開発を選びました。



ーどのようなビジネス的観点で半導体型を選んだのでしょうか


湊氏:弊社blueqat社はこれまで7年間量子コンピュータの事業化に取り組んできましたが、最近では多少世間で話題になるようにはなってきましたが、もっと事業化を進めるためにはもっと多くのマシンが出回るようにならないと普及しないのではないかと思ってきました。まだまだ量子コンピュータはニッチな産業で、研究者や一部の企業に利用が限定されてしまっています。半導体型は超伝導方式と比較して小型化ができるという利点があり、小型化ができれば全世界のデータセンターへの導入が進んでより弊社が開発しているソフトウェアなどが普及するのではと考えました。

半導体量子コンピュータは比較的動作温度が高く、冷凍機と呼ばれる冷やす機械が小型化が可能です。また、既存半導体の最先端プロセスを利用するため、集積化と呼ばれる量子ビットをたくさん用意することができます。そうした将来性を選びました。



ーあまり一般的には聞かない方式に思えますが。


湊氏:そうですね。あまり国内の開発は活発ではないかもしれません。国立の研究所や大学が主体になって多少行っているくらいです。



ー海外では開発はどうなのでしょうか?


湊氏:海外でも活動は控えめでしたが最近急激に注目度が上がっています。米国のインテル社、台湾のTSMC社、最近ではベンチャー企業equal1と一緒にグローバルファウンダリーズ社などのほか、欧州ではイギリスのシノプシス社や、ベルギーのimec、フランスのletiなどの大手機関や企業の取り組みが急激に増えている気がします。日本でも今開始すればこの方式なら産業化にギリギリ間に合うのではないかと思っています。ほかの方式は大きく出遅れているため、半導体が最後の砦なのではないかと考えています。



ー課題点はなんでしょうか


湊氏:課題は量子ビット数ですかね。全世界で最先端でもまだ数量子ビットの開発にとどまっています。技術的なブレイクスルーを誘発するような投資が必要かと思っています。



ーなぜベンチャーがやるのでしょうか。国の方針などに任せるなどの選択肢は無いのですか?


湊氏:量子コンピュータは多くの方式が出回っており、どの方式がうまく行くかは全くわからない状況で、日本はそれでも戦略的には大きく出遅れていると思います。個人的には最先端の技術までまだ理解が追いついていない気がするので、このままだと大きく出遅れる可能性が高いので、思い切っていくことにしました。産業化と研究は違うというのがあまり浸透していない気がします。日本は研究主体なので産業化観点がないのは致命的と考えていて、将来的な産業の育成のためには、理解されなくても多少弊社の犠牲も必要かなと考えています。



ー量子コンピュータの産業化とはどのようなものなのでしょうか?


湊氏:現在世界中の投資の大半はハードウェアに対してになっています。量子コンピュータを実現するための機器の開発が部品ごとに行われていてそれを組み立てるという仕組みになっています。特に日本は組み立てが弱いと感じます。そこを抑えないと世界の下請けになっていずれ産業そのものが切られてしまうと感じます。



ー半導体量子コンピュータではどのような産業化が可能なのでしょうか?


湊氏:半導体量子コンピュータは大きく、制御読出機器、冷凍機、チップの開発に分かれると思います。全体の組み立てを行うにはこれらの部品の開発のバランスと統合が大事になります。


制御読み出し機器は今は大型ですが、これを冷凍機に入れるクライオCMOSと呼ばれる低温チップの開発が必要です。日本はどれも出遅れ始めていますが、このクライオCMOSは特に遅れそうだなと感じています。冷凍機は1K付近の温度なので小型化安定化が必要になります。チップはウェハの開発から製造機器も全て改造や開発が必要になってきます。莫大な投資と開発ですが、日本の得意なところばかりなのでなんとか最後の力を振り絞っていけるのでは無いかと。



-Open Silicon Quantumは今後どのような展望があるのでしょうか?


湊氏:現在だいぶ協力企業さんが増えてきたので、まずは試作品の開発を2023年の春までに終わらせます。その後は量産化の検討に入ります。



ー意外と早いですね


湊氏:日本でよかったところは基礎技術が揃っていて、今は半導体業界も好調なので比較的好意的という面もありますし、おそらく今後の危機感とかも他に比べると大きい気がします。まだまだ黎明期ですがやることも明確なのが課題設定で助かっています。



ー量産化についてはどのような展望でしょうか?


湊氏:量産化はチップについてがメインですが、商用の最先端のラインを立ち上げられるかどうかにかかってます。莫大なお金もかかりますし、チップの開発状況にも大きく左右されます。今はほぼ皆無な状態なのでファブレス含めて積み上げやトレンドがどっちにふれるかも注意深く見ていきたいと思います。



ー御社はどのようにビジネスをしていくのでしょうか?


湊氏:弊社はソフトウェア、ミドルウェア企業なのであくまでハードとソフトをつなげる部分の開発が中長期で進めば良いと思っています。ハードウェアに関しては万が一うまく行くようなら分社化などでより得意な人に任せたいと思ってます。ハードウェアは本業では無いのでかなり注意深くやりたいと思います。



ー本業でないとのことですが、勝算はあるのでしょうか?


湊氏:本業ではないのですが、実は2021年の春までハードウェアの部門を持っていまして、超伝導量子ビットの設計開発を国から請け負っていて、2018年には独自のチップ開発にも成功しています。一から立ち上げた部門で、自分の力不足で解散してしまってのですが、ハードウェアの運用のリスクノウハウはつきました。ファブレスなどでうまく立ち回り、なんとか開発を成功させられると思います。



ー最後に半導体量子コンピュータに興味のある方々に何かコメントはありますでしょうか


湊氏:話題になってからの参入は難しく、シリコン半導体の参入開発チャンスはいまが最適かと思います。ぜひ興味ある方は展示会を訪れていただいたり、問い合わせをしてみてください。量子コンピュータ業界主導ではなく、半導体業界主導で活動を行っていますのでとっつきやすいと思います。



ーありがとうございました。


湊氏:ありがとうございました。


 

2021年12月15日から17日まで東京ビックサイトで半導体業界の祭典、SEMICON Japanにて、第2回 量子コンピューティングパビリオンが設置されます。当パビリオンでは、半導体量子コンピュータについての紹介をしています。来場には登録が必要とのことですので、こちらからご覧ください。




 

企業概要


企業名:blueqat(ブルーキャット)株式会社

所在地:東京都渋谷区渋谷2-24-12 渋谷スクランブルスクエア39F

設立:2008年

資本金:1億3,000万円(資本準備金94,986,050円)

URL:https://blueqat.com