2022年3月の研究論文・ソフトウェア編


By Dr. Chris Mansell


過去1ヶ月間に発表された量子コンピューティングと量子通信に関して、興味深い研究論文の概要を紹介する。



Software 】


Title: Random Quantum Circuits Anticoncentrate in Log Depth(ランダム量子回路の対数深度での反濃度化)

Organizations: Caltech; Perimeter Institute for Theoretical Physics; AWS


 超能力の半分しか持っていないことを想像してみてほしい。例えば、高いビルを一気に飛び越えることができても、数階の高さから地上に着地する衝撃に耐えられないとか。これは量子コンピュータに近いものがある。複雑な問題の答えを指数関数的に大きな量子状態に保存しておいても、測定されるとランダムにサンプリングされた数ビットしか明らかにならないのだから。読み出しプロセスの確率的な性質を考えると、状況によって測定結果の分布がどのように異なるのかが問われることになる。特に、構造化された量子回路とランダムな量子回路を区別する重要な特徴はあるのだろうか?本論文では、ランダム量子回路が、回路の深さが驚くほど浅くても、かなり均一な結果を出力できることを示した。このことは、量子至上主義的な実験の解釈に対していくつかの示唆を与えている。


Link: https://journals.aps.org/prxquantum/abstract/10.1103/PRXQuantum.3.010333



Title: Optimal quantum dataset for learning a unitary transformation(ユニタリー変換を学習するための最適な量子データセット)

Organization: Baidu Research


 量子力学では、典型的な実験として初期状態を準備し、それを単位時間ごとに進化させ、最終的な状態を量子トモグラフィーによって推測する。重要な点として、ユニタリーオペレータが何であるかを知るために、何種類の初期状態が必要なのかという疑問がある。この論文の著者らは、ユニタリーがn個の量子ビットに作用し、補助的な量子ビットが存在しないとき、初期状態が純粋でなければならないなら答えは2^n、混合可能なら2であることを証明した。この結果は、オラクルコンパイルとハミルトニアンシミュレーション、両方の実装を容易にするものである。将来的には、ユニタリーではなく、量子チャネルについても同じ問題を検討することになるだろう。


Link: https://arxiv.org/abs/2203.00546



Title: Is quantum advantage the right goal for quantum machine learning?(量子機械学習の目標は、量子的な優位性でよいのか?)

Organization: Xanadu


 量子機械学習(QML)の研究者は何をすればいいのか?現在の複雑性理論の理解に従い分析できるQMLアルゴリズムは、可能なすべてのQMLアルゴリズムのごく一部を構成するに過ぎない。これは古典的な機械学習(ML)にも当てはまるようで、QMLの研究者は、古典的なMLのために考案された理論を調べることにした。するとそのことが急速に発展していることに気づいた。ある問題に対し、最善の試みをベンチマークしようとすると、問題が小さすぎたり、人工的で作為的であったりで、真の実用化について何も語れてないようなのだ。この難問を解決するには、古典的なMLを凌駕することを目指すのではなく、生産的なQML研究の領域を拡大することかもしれない。これは、2人の著名な理論家が最新のプレプリントで行った興味深い指摘の一部である。


Link: https://arxiv.org/abs/2203.01340



Title: Breaking Rainbow Takes a Weekend on a Laptop(ブレイキング・レインボーは、ノートパソコンで週末を過ごす)

Organization: IBM


 ポスト量子暗号は、量子攻撃と古典攻撃の両方に耐える暗号ツールの開発を目指している。現在、米国標準技術研究所(NIST)では、広く普及させることができる安全で実用的なアルゴリズムを見つけようとしている。現在、Rainbowと名付けられた署名方式が検討されているが、この新しい論文の結果が再現されれば、もう長くは続かないかもしれない。普通のノートパソコンを使用し、わずか2日でプロトコルを破ったとしている。これは、プロトコルの最も低いセキュリティ設定に対してのみ行われ、そのまま増加させることができるだろう。もちろんこれでは、日常的に使うには実用的ではなくなってしまう。この攻撃にさらなる改良が加えられるかどうか、またRainbowプロトコルがそれらに耐えられるかどうかは、現在のところ不明である。


Link: https://eprint.iacr.org/2022/214



(翻訳:Hideki Hayashi)

提供:Quantum Computing Report