レポート:11月発表の研究論文 ②

By Dr. Chris Mansell


この1カ月間に発表された、量子コンピューティングと通信に関する興味深い研究論文をいくつか要約する。


【 Hardware 】


Title: アディアバティック量子線形回帰(Adiabatic quantum linear regression)

Organization: Oak Ridge National Laboratory


従来のコンピュータと量子コンピュータは、どちらも最適化問題を解くことができる。どちらが速いだろうか?論文の著者は、2つの特定の実装を検討し、D-Wave社のアディアバティック量子コンピューターが、1,600万のデータに対して、古典的なIntel i9プロセッサより最大2.8倍速い線形回帰を実行できることを発見した。この実験は、最先端のスーパーコンピュータとの比較ではないため、量子力学的な優位性を示すものではない。代わりに、量子ハードウェアへの問題の組み込みが効率的であること、デバイスの性能が向上していること、そして古典のように何十年にもわたる研究開発の歴史がないにもかかわらず、量子コンピュータが同等のランタイムを持つことができることを示した。

Link: https://www.nature.com/articles/s41598-021-01445-6

Title: ループベースの単一モードフォトニック量子プロセッサにおけるプログラム可能で連続的なガウスゲート(Programmable and sequential Gaussian gates in a loop-based single-mode photonic quantum processor)

Organization: The University of Tokyo


光がもつ波動と粒子の二重性は、光量子情報処理への異なるアプローチが可能であることを意味している。電磁波の連続的な位相と振幅が主役になることもあれば、光ビーム内の離散的な光子の数が中心となることもある。

この論文で検討される最終的な選択肢は、両方の長所を最大限に活用することだ。波の連続変数に依存するガウス型の論理ゲートは決定論的であり、波が非常に短く離散的である場合、それぞれのパルスが量子ビットとして機能する。時間領域の多重化により、量子ビットのパルスが光ファイバーのループを回るようにする設定は、これまでもエンタングル状態の生成に使用されてきた。今回のアップグレードでは、以前の測定結果に基づいて、実行する演算を選択することができる。それにより汎用的であり、スケーラブルでプログラム可能な量子計算が可能になった。


Link: https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abj6624

Title: 交差共鳴ゲート(the cross resonance gate)の拡張(Cross-Cross Resonance Gate)

Organizations: IBM; The University of Tokyo


量子ビットは、論理ゲートの影響を受けない場合でも、環境との相互作用によりデコヒーレンスになる。そのため論理ゲートの目標は、このデコヒーレンスを増加させることなく動作させることだ。この実現は「コヒーレンス限界(the coherence limit)に達する」と言われている。

この論文では、超伝導量子ビットのための交差共鳴ゲートの拡張を提案し、実証を報告した。同じ強度のマイクロ波パルスを、1つではなく2つの周波数で使用することにより、ゲートを高速化し、計算基盤から量子状態が漏れる可能性を半減する。全体として、新しいゲートの忠実度はコヒーレンス限界に近く、より多くのマイクロ波周波数を使用することで、さらなる改善が見込まれる。


Link: https://journals.aps.org/prxquantum/abstract/10.1103/PRXQuantum.2.040336


(翻訳:Hideki Hayashi)

提供:Quantum Computing Report