レポート:11月発表の研究論文 ③

By Dr. Chris Mansell


この1カ月間に発表された、量子コンピューティングと通信に関する興味深い研究論文をいくつか要約する。


【 Hardware 】


Title: グラフェン伝導体を用いた原子チップの高機能化(Using graphene conductors to enhance the functionality of atom chips)

Organizations: University of Nottingham; Durham University; University of Sussex; Humboldt-Universität zu Berlin; University of Applied Sciences Wiener Neustadt


冷却原子の均質な集団をコヒーレンス状態で操作することによって、驚くほどの高い精度で、時間の経過、高感度での空間分解能および視野での磁場測定が可能になる。原子を電流の表面に近づけたり、より長い時間トラップすることで、量子センシングやタイミング・モジュールを飛躍的に改善することができる。この理論論文では、電流が持つノイズと、原子表面の引力を詳細に計算し、金属のワイヤーをグラフェンに置き換えることで、これら両方の効果が得られることを示している。主要な量子計測プラットフォームを改良することに加え、ハイブリッド(原子素子-固体素子)な量子情報処理デバイスの設計が可能になると考えられる。


Link: https://journals.aps.org/pra/abstract/10.1103/PhysRevA.104.053108

【 Software 】


Title: 量子機械学習における一般化: 量子情報の立場から(Generalization in Quantum Machine Learning: A Quantum Information Standpoint)

Organizations: University of Florence; INFN Sezione di Firenze; University of York


ベル研究所で生まれた情報理論は、今日でも数多くの応用がある20世紀の偉大な功績であった。この論文では、量子情報理論を用いて、量子状態で提示されるデータを、どのようにカテゴライズできるか分析している。著者らは、ボトルネックとなるデータの無関係な側面を廃棄することにより、正しいカテゴリーを選択するために不可欠な情報だけを通すアイデアを模索している。既に、数値実験により理論は裏付けられており、関連する量子アルゴリズムを設計する際の有用な指針となるだろう。


Link: https://journals.aps.org/prxquantum/abstract/10.1103/PRXQuantum.2.040321



Title: 量子コンピュータにおける測定誤差のスケーラブルな緩和(Scalable Mitigation of Measurement Errors on Quantum Computers)

Organization: IBM


量子計算では、量子状態の準備、論理ゲートの実装、測定の際にエラーが生じる。中でも測定誤差の影響を軽減するには、その誤差を記述した行列を作成し、古典コンピュータを使用し行列を反転、そして測定誤差がない場合の出力を確認することだ。残念ながら、行列のサイズは量子ビット数に対し指数関数的であるため、このアプローチには拡張性がない。この論文で著者らは、使用する行列のより小さなバージョンを明示的に構築することで、測定誤差を軽減できることを示した。この分かりやすい解決策は、多くの場面で採用することができ、最新の実験で量子ビット数が増加するにつれて特に重要になるだろう。


Link: https://journals.aps.org/prxquantum/abstract/10.1103/PRXQuantum.2.040326


(翻訳:Hideki Hayashi)

提供:Quantum Computing Report