コラム推薦論文:量子ボリュームの実用化、NISQデバイスの状況
様々な種類の量子コンピュータ。最近増えているニュースに、性能を比較するための各種ベンチマークに関するものがあります。考えてみると、実際に比較するためのテストの結果を示すデータは、ほとんど目にしていません。異なる方法やアルゴリズムを使用しているレポートもあり、時にはリンゴとオレンジを比較しているような場合もあります。
そのような中で、ロスアラモス国立研究所(LANL)の研究者が、IBMの量子ボリュームテストを、5メーカー24種類のマシンで実行し、arXivに投稿したレポートを見て、これを待っていた!という気持ちでした。「量子ボリューム」という指標にも、改善の余地はあるかもしれません。しかし、同じ指標によりこれだけ多くの異なるプロセッサのデータが揃っていることを考えると、このレポートは読む価値があるでしょう。
ここでは、このレポートから読み取れる興味深い点を紹介します。
LANLのチームは、ベンダーが発表しているマシンの量子ボリュームを測定することはできませんでした。理由は2.によるものだと考えられます。
コンパイルの最適化は大きな違いを生み出します。LANLのチームは、テストで相応の最適化はしたものの、デバイス・アクセスはホワイトボックスではないと断りを入れています。確かに、メーカーがテストを行うのであれば、最高のパフォーマンスに必要な特異性や微調整を理解した最適化を行えるでしょう。このような高度な最適化は、一般的なユーザーには難しすぎたり、時間がかかりすぎたりするのは当然です。
今回のテストでは、Honeywellのプロセッサが非常によい結果を残しました。量子ボリュームの測定下限値は256、次点の測定値は32でした。このレベルはさらに高くなる可能性があるとしていますが、使用上の制限により、これ以上大きな量子ボリューム回路の測定は出来ないということです。
この報告書は興味深い内容で、全ての量子ビット演算の忠実度を向上させるためには、やるべきことがさらに多くあるという見解を強調しています。2つのケースを除いて、量子ボリュームの測定は、プロセッサで利用可能な量子ビットの全体数ではなく、テストされた回路の深さによって制限されました。このレポートはarXivに掲載されています。詳細は確認ください。
※参考
◆arXiv
https://arxiv.org/abs/2203.03816v1
(翻訳:Hideki Hayashi)