特集インタビュー:金融業界から量子コンピュータに参戦するフランスのQuantFiとは? 1/3


ビジネスインタビュー


10月に行われた量子コンピューティング EXPOでも多くの来場があり、話題となっていたフランスの量子金融QuantFi。興味を持っている方も多いのではないでしょうか。今回、カントリーマネージャーの田中様にインタビューさせていただきました。とても中身の濃いインタビューとなり、全3回で掲載します。


 


ジャパン・カントリー・

マネジャー


田中香織

 

ー本日は、フランスの量子金融スタートアップ「QuantFi」の日本におけるカントリーマネージャー田中様にインタビューの機会をいただきました。どうぞよろしくお願いします。









田中香織氏(以下、田中氏):よろしくお願いします。



ー日本市場へは進出して間もないので、まだ知らない方も多いと思います。まずは会社の紹介をお願いします。


田中氏:QuantFiはフランスの量子金融の会社で、創業者はアメリカ・ニューヨーク出身のKevin Callaghan(ケヴィン・キャラハン)です。ウォール街の証券マンでした。ケヴィンは、フランスのビジネススクールINSEADで同期だったフランス人と共に、2019年にパリでQuantFiを設立しました。共同創業者の2人とも金融業界でキャリアを積んできたので、量子コンピュータの会社を創業するにあたり、金融に特化したソフトウエアを提供する会社にしたのは自然なことでした。



ーニューヨークとフランス、それぞれの出身である学友が手を組んだのですね。欧米の企業ではそれも自然なことのようです。


田中氏:ちなみに、私もフランスが好きですがケヴィンもフランスが好きなようで、ニューヨークにアパートを残しつつフランスに移住しました。



(フランスにいるQuantFiのメンバー。左から2番目のサングラスをしているのがケヴィン。本社のテラスでの記念撮影)



ーフランスは、観光客世界一を30年以上続けてると言います。私は欧州に行ったことがなく憧れます。では創業にあたり、どんな課題を解決しようとスタートしたのでしょうか?


田中氏:金融業界には、テクノロジーによって改善できる部分がまだたくさんあります。金融の商品やサービスは、裏で大規模な計算に支えられています。扱っている金額の規模が大きいので、ほんの少しであっても、改良・効率化できたときのインパクトが非常に大きいという特徴があります。そして、量子コンピュータは大規模な計算が得意。つまり金融は、そもそも量子技術によって改善できる可能性がはっきりしていて、非常に相性が良いということです。



ーNDAQなど米の証券取引は、現在6割がコンピュータによる自動売買で、アルゴリズムの勝負になってると聞きました。金融はその他の商品やサービスなども含め、量子コンピュータへの期待が大きいのですね?


田中氏:例えばVaR計算は、過去のデータをもとに、確率的に一定の範囲内で被る損失を計算するものです。これに効くのが、QAE(量子振幅推定)という量子アルゴリズムです。そこで、どのような高いレベルの量子アルゴリズムが作れるか、というところに量子ソフトウエア企業の存在価値があるわけです。QuantFiのリサーチャーたちは、さすが数学が強いフランスだけあって非常に優秀です。後でお話ししますが、量子アルゴリズムのチュートリアルを実際に触れてもらえれば、それがお分かりになると思います。またクライアントごとに、取り組みたい分野と課題はそれぞれ異なりますので、量子金融計算の技術で、それぞれのクライアントの課題を解決していきたいです。



ーありがとうございます、課題と可能性についてよく分かりました。2019年に創業してから、すでに日本で活動をスタートしています。とてもスピード感がありますが、日本市場へ参加するに至った経緯を教えてください。


田中氏:一つには、フランス人の共同創業者が、フランスの銀行の日本法人で10年ほど働いていたことがあり、かなりの親日派で、日本のビジネス・カルチャーも知っていたという点があったと思います。



ーなるほど、10年ということは人脈がある安心感もあったのかもしれません。


田中氏:ビジネス的な観点から言うと、日本が量子コンピューティング業界で歴史があり、いくつかリードする分野もあります。また、経済大国の一つでもあるので、ビジネスチャンスを求めて日本市場に入るのは良いと考えたからです。



ー量子技術は研究者の先達もあり、知見・技術は多いかと思いますし、外資としてともに産業を盛り上げていけるのは嬉しいことです。


田中氏:ただ、2019年11月に市場調査で日本に来て私を見つけるまでは、具体的にどうやって日本に足掛かりを作るかは、多少運まかせなところがあったと思います、と言っておきましょう。
















(QuantFiと出会ったFintech協会の4周年パーティー(2019年11月21日))



ーそうですね。まだ田中さんが登場していません(笑)。出会いはどのようなものでしたか?


田中氏:2019年11月に、フランスからチームの3名がはるばる日本へ市場調査に来ていました。来日して1週間経ったときに、ちょうど日本FinTech協会の4周年記念パーティーがありました。どういうコネを使ったのか今も不思議に思うことがあるのですが、チーム3名がそのパーティーに参加していました。



ーどういうコネ(笑)、日本法人に10年いたというあたりでしょうか?興味あります。


田中氏:パーティーは大手町のGlobal Business Hubで開催され、協会の役員たち、金融庁、金融機関、記者、スタートアップなどが集まっていました。ケータリングのフードが洒落ていて、それがあっという間になくなったのを面白いと思った記憶があります(笑)



ー食の話題から話が盛り上がることも多いですから、よいサービスだったのですね。


田中氏:私は私で、その頃は日本のFinTechスタートアップの広報をしていたので、そのクライアントと共に参加していました。私とQuantFiとの出会いは、そのパーティーで果たされるのですが、私を日本で見つけたのは、QuantFiにとって本当に偶然が重なった幸運に恵まれた結果だと考えています。


















(4周年記念ケーキとテーブル。おしゃれだった)



ーそうですね、他国へ進出するにあたって、マネージャーをどうするかというのは最初の最も大きな問題です。


田中氏:想像してもらうと状況がよく分かると思うのですが、日本人はパーティーの時に知らない人にあまり自分から話しかけたりしませんよね。ましてや相手が外国人ならなおさらで、実際フランスチームの周りにはあまり人がいなくて、彼らはぽつんとしていました。



ー私もそうですが、英語の文法などはともかく会話となると苦手感が強く気後れしてしまいます。


田中氏:遠くからその様子を見つけた私は、彼らに興味を持ったので何か喋りにいこうと思い、フランスチームのところに行って「Hi」と声を掛けました。その結果、5分後には現職のオファーを受けました。



ーおー(笑)、もちろんその後の信頼関係の構築もあってだと思いますが、機をみるというか、何にでもタイミングってありますね。


田中氏:翌日、共同創業者と私は職務内容について話し合い、合意に至ったので、お祝いとして一緒にお寿司を食べに行きました。「日本人はなかなか本音を言わないから、食事に誘って本音を確かめた」そうです。私が日本人かどうかは疑問が残りますが、確かに日本のことをよく分かっていますね。



ーその疑問については、改めて教えてください。













(盃を交わしたときにつまんだお寿司)



田中氏:ところで、パーティー会場に一緒に来ていたリサーチャーは、ちょうど直前に開催されたIBMのハッカソン「Qiskit Camp Asia」で2位を取ったとのことでした。内容は、画像処理に量子技術を使ったケーススタディで、同じチームには慶應大学の学生もいました。


詳細:https://github.com/qiskit-community/qiskit-camp-asia-19/issues/24



ーなるほど、各種ハッカソンは、日本も産学で力を入れています。リサーチャーも量子技術に慣れ親しんでいる方だったと。




















(一番右がQuantFiのリサーチャーのジャン・フィリップ)





【 Part 2に続く 】


Part 1は、QuantFiの創業から、日本で田中さんがカントリーマネージャーに就任された経緯を話してくれました。人柄もあり、とても楽しく充実したインタビューとなりました。この後、Part 3まで続く予定です。お楽しみに(編集部)



企業概要

企業名:QuantFi

所在地:フランス パリ

設立:2019年

URL:https://www.quantfi.com

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