IBM、マルチプロセッシングと先進のソフトウェアでロードマップを最大4,158量子ビットまで拡張




 IBMは、量子プロセッサーのロードマップを拡張し、2023年から2025年の間に導入される4つのプロセッサーを追加した。これらの開発には、さまざまな種類のマルチプロセシングが含まれ、2025年には4,158量子ビットのマシン(コードネーム:Kookaburra)を実現するとした。


 最初のプロセッサは「Heron」と呼ばれ、1チップあたり133量子ビットの密度で2023年に導入される予定である。2023年に発表予定の1,121個の「Condor」チップに比べれば後退したように見えるかもしれない。しかし将来の開発に不可欠ないくつかの重要なアーキテクチャ・コンセプトを開拓しているため、実際には前進と見なすことができる。まず、Heronはゲートを再設計し、「tunable couplers」と呼ばれる機能を搭載した。ビットの間に配置されたジョセフソン接合で、量子ビットを分離し、クロストークを最小にするものである。tunable couplersは、Googleが72量子ビットのBristleconeチップを54量子ビットのSycamoreチップに設計変更した際に初めて採用されている。これにより、量子ビットの品質指標が大幅に改善され、Googleは量子優位性の実験を進めることができた。同様に、tunable couplersにより、IBMの従来のプロセッサよりも高速なゲートスピードと低クロストークを実現していく。


 Heronのもう一つの重要な革新性は、複数のHeronチップが古典的な通信を行い、共通の制御ハードウェアを使用することができることだろう。BlueForsと共同開発中のIBM System 2エンクロージャの最終的な冷却能力次第では、複数のHeronチップを同じ希釈用冷蔵庫に入れることができるかもしれない。プロセッサ間の古典的な通信は、量子レベルの通信ほど強力ではないが、それでもユーザーにとって即効性のある利点となる場合がある。例えば、ユーザーが1,500ショットを必要とする問題を提出した場合、各プロセッサで500ショットを実行すれば、3分の1の時間で問題を実行することが可能だ。

IBMは、「entanglement forging」と「circuit knitting」と呼ばれるソフトウェアも開発している。この技術で、300量子ビットを使用する量子プログラムを、100量子ビットの塊3つに分割し、それぞれをプロセッサの1つで実行し、結果を古典プロセッサに送りcircuit knittingというプロセスで3つの結果を結合できるかもしれないと言う。


 2024年には、IBMが2つの異なる方式のプロセッサー間で量子通信を導入する予定である。1つ目は、同じ希釈冷凍機内にある3つのHeronチップを、量子チップ間カプラで接続したシステムを構成すること。彼らは、量子ビットの接続性や量子ビットの忠実度を劣化させることなく実現できると考えており、「Crossbill」という408量子ビットチップを作成する予定だ。物理的には3つのチップで構成されていても、ユーザーが見る限り、408個の量子ビットが1つのモノリシックチップに搭載されているのと何ら変わりはないという。


 IBMが2024年に開発する2番目のプロセッサは、「Flamingo」と呼ばれる1386+プロセッサで、3つ以上の462量子ビットチップをネットワーク接続したものになる。これは、IBMが「long-range couplers(長距離カプラー)」と呼ぶものを使い、異なる希釈冷凍機にある量子ビットチップを約1メートルの極低温ケーブルで接続するもので、Crossbillとは別のアーキテクチャとなる。彼らは、上記のCrossbillのチップ間カプラーとは異なり、量子ビットの接続性と忠実度はオンチップ量子ビットと同じレベルを維持することができないと指摘している。多少の劣化はあるだろうが、どの程度かを示すのはIBMにとって時期尚早である。この劣化を考慮し、この影響を最小化するために量子ビットの演算を割り当てることができるアルゴリズムを含むスマートなソフトウェアが必要であろう。


 2025年、IBMはこれらの技術をさらに拡張し、3つ以上のFlamingoチップをネットワーク接続して「Kookaburra」と呼ばれる4,158ビット以上のシステムを作り、2026年以降もこれらの技術に基づく開発を続ける道を開いていく。


 なお、これはIBMの開発ロードマップであり、IBMがユーザーに提供するプロセッサーは異なる可能性があり、また提供時期が遅れる可能性はあるだろう。一方でIBMは、2022年に433量子ビットプロセッサ「Osprey」をリリースし、量子ボリューム数を256から1024へと4倍に増やす目標、CLOPs測定を2.9Kから10Kに3倍以上増やす別の目標、回路途中での測定と量子ビットの再利用を可能にする動的回路機能の導入など、様々に忙しくなる予定だ。


 ソフトウェアでは、ユーザーが多くの古典/量子ハイブリッドアルゴリズムをより簡単かつ迅速に実装できるよう、Qiskitランタイムの機能拡張を続けていく予定だ。また、ユーザーがより正確な結果を得られるように、ハードウェアのエラーを軽減するソフトウェアにも取り組んでいる。さらには、ハードウェアやエラー処理の複雑さを考えずに量子計算を簡単に行えるようにする基本ルーチンであるプリミティブを発表している。ソフトウェアによる全体的な目標は、そのシステムを使用する開発者が、量子コンピューティングへのアクセス性、簡便性、パワーを高め、実世界のアプリケーションで量子の優位性の優位性をはやめることにある。


 IBMは、ロードマップの発表について、ニュースリリースブログ記事を掲載している。また、YouTube動画へのリンクはこちら



(翻訳:Hideki Hayashi)

提供:Quantum Computing Report




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