コラム:量子関連技術、市場の予測方法

 来週、有名なベンチャーキャピタルがやってきます。そこであなたの会社は、量子関連、特に自分の会社に投資することがいかに素晴らしい機会であるかを印象付けたいと思うわけです。彼らは、10億ドルのユニコーンになる可能性を秘めたポートフォリオ企業で、大きな市場に取り組む企業に投資し、みんなが大儲けすることを好むのはご存知の通り。

 できるだけ大きな市場予測を提供し、FOMOを発生させ、あなたに大量の資金を提供するよう動機付けなければなりません。


 さてそこで、その予想を少しでも大きく膨らませ、好印象を与えるためのコツをご紹介します。幸運を!



・市場収益予測ではなく、市場価値を投資家に示す


 いくつかのコンサルティング会社が、市場価値に基づく長期的な市場予測レポートを発表しているのはご存じの通り。例えば、BCGはFull-Scale Fault Tolerance時代(およそ20年以上後)に4億5000万~8億5000万ドルという見積もりをよく出しており、McKinseyは2035年までに主要4産業で7000億ドル近くの量子コンピュータの価値を推定しています。

 古典的なコンピューティングでは、このような方法論はあまり見られません。重要なのは、BCGが古典的コンピューティングで経験したことに基づいて、この価値のうち80%は技術のエンドユーザーに、20%は技術の提供者にもたらされると推定している点でしょう。この試算は、政府の資金がどのように自国の経済に貢献するかを理解したい政府政策アナリストにとっては、確かに貴重なものと言えます。しかし、投資家にとってはどうでしょうか?投資家が関心を持つべきは、提供者側であり、投資した企業がどれだけのパイを手にすることができるのかということです。



・年単位の数字ではなく、累積的な数字を使用する


 私たちが目にするほとんどの市場予測は、年間の数字に即しています。しかし、必ずしもこの方法である必要はないのです。例えば、2022年から2030年までの累積売上高を提示することも可能でしょう。売上は年々増加すると思われますが、単年度の数字を提示するよりも、数年分の累積数字の方がやはり大きくなるはずですから。



・いくつかの量子セクターのうち、どのセクターが予測に含まれるかが曖昧であること


 多くの場合、量子関連技術は、量子コンピューティング、量子通信、量子センシングの3つに分けて考えられています。また、「量子インスパイアード」と呼ばれるものもあり、これは、誰かが量子ベースのアプローチを検討した後に開発された、革新的な新しい古典コンピューティング技術を使用する方法です。このように、様々な分野の予測を束ねることで、たとえ量子関連企業がその一部または1つにしか取り組んでいなくても、全体の予測を増やすことが可能となるでしょう。



・複数の予測から選べる場合は、最も数値の高いものを選ぶこと


 量子技術市場の良い点は、利用できる予測に事欠かないことです。それらはすべて異なる数字を持っており、異なる仮定と方法論に従っています。だから、もしあなたが誰かに感銘を与えたいのなら、最も簡単な方法は、予測を大きく示すものを使うことでしょう。これは、多くの異なる市場で、多くの人々によって頻繁に使用されている実績のある技術です。



 上記の記事は皮肉たっぷりに書かれたものだが、量子関連の市場規模を論じる様々なプレゼンテーションの中で、これらの難解な表現が使われるのを我々は以前から目にしていました。つまり本当の教訓は、予測を見る人の側にあるといえるでしょう。予測に依拠する前に、その予測を注意深く見直し、その作成に用いられたすべての仮定と方法論を理解する必要があります。投資を行う前に、利用可能な市場全体の規模を把握することが重要であることは理解していますが、使用する推定値が、行おうとしている投資にとって本当に適切であるかどうかを確認する必要があります。成熟した市場の予測は、過去の歴史を見て、将来への成長傾向を外挿することで行われることが多いものです。

 しかし、量子技術は新しい市場であり、誰も予想しないような発展を遂げる可能性があるため、この方法は通用しません。予測に盛り込まれた仮定を念頭に置き、その仮定が時代とともにどのように変化しているかを追跡することが必要でしょう。



(翻訳:Hideki Hayashi)

提供:Quantum Computing Report