特集:米国で登場間近、最新型冷却原子量子コンピュータに搭載の装置メーカー一覧を紹介。

こんにちは、米国では最新型の冷却原子型量子コンピュータが流行り始めています。今回本特集では、これから登場予定のマシンに利用されている装置メーカーを紹介していきたいと思います。今後の量子コンピュータの開発に際しての市場の把握に役立つと思われます。


冷却原子

冷却原子タイプの量子コンピュータは、超伝導、イオントラップに次いでの3番目の量子ビット型量子コンピュータとして2022年の春に本格的に市場投入され、Amazon社のAWSへの搭載がアナウンスされています。今回は米国ボストンを本拠地に最近話題になっているQuEra社のマシンを中心に、現在どのような方式の装置が利用されているのか、国などを中心に紹介したいと思います。


冷却原子のマシンは光関連の技術や装置が多く利用されており、中核の技術は「光ピンセット」と呼ばれる手法で原子を操作して計算します。原子を捕まえる過程と、原子を操作する過程においても異なる技術が使われており、それらを制御するための装置には世界の名だたる企業のものが利用されています。今後商用化を加速するにあたって、どのような方向性で技術開発がされていくのか、どのような国が技術に関わっているかを概観します。


参考文献

参考文献はこちらのNatureに掲載された論文の無料版を利用しました。

Quantum phases of matter on a 256-atom programmable quantum simulator

https://www.nature.com/articles/s41586-021-03582-4

https://arxiv.org/abs/2012.12281



仕組みの概要

引用:https://arxiv.org/abs/2012.12281


装置や計算手法の概要はこちらです。


1,空間位相変調器(Spacial Light Modulator / SLM)と呼ばれる装置を利用し、光ピンセット呼ばれる原子を固定する仕組みをレーザーを使って作ります。


2,真ん中したら辺に原子が固定されているのが見えますが、磁気光学トラップと呼ばれる手法で原子を閉じ込め、そこに光ピンセットを適用して、原子を完全に操作できる形にとらえます。


3,次にAOD(Acousto-Optical Deflectors)と呼ばれる装置で、動く光ピンセットを操作し(先ほどのSLMのレーザーに重ねる形で操作)、原子を整列させます。


4,そして、真ん中下にある青と赤で彩られた二種類のレーザーを利用してラビ振動と呼ばれる手法で原子単体や原子同士の計算をおこないます。


5,最後に計算結果を一番下のEMCCDと呼ばれるカメラで撮影をして完了です。


これらの計算過程や測定には多くの市場に出回っている機器が利用されています。


メーカー概観

どのようなメーカーの製品が利用されているか見てみます。


まず大元の出力レーザーは、


M Squared(イギリススコットランド)

https://www.m2lasers.com/



次に中核の光ピンセットを構成するSLMは、


浜松ホトニクス(日本)

https://www.hamamatsu.com/jp/ja/index.html


光ピンセットを調整する対物レンズには、


ミツトヨ(日本)

https://www.mitutoyo.co.jp/


が利用されています。どうやら冷却原子を構成する主要部品には日本メーカーの製品が積極的に利用されているようです。


動的光ピンセットに利用される特殊なレーザー、DBR(分布反射型レーザー)は、


Photodigm(米国)

http://www.photodigm.com/


上記レーザーを通す増幅器は、


MOG Labs(オーストラリア)

https://www.moglabs.com/


動的ピンセットをつくるAODは、


AA Opto(フランス)

http://www.aaoptoelectronic.com/


上記AODを制御するAWGは、


Spectrum Instrumentation(ドイツ)

https://spectrum-instrumentation.com/en


リュードベリレーザーを当てるには下記の三社の製品が、


シリンダー

Stable Laser Systems(米国)

https://stablelasers.com/


ダイオードレーザー

Toptica(ドイツ)

https://www.toptica.com/ja/


増幅器

Azur Light Systems(フランス)

https://azurlight-systems.com/


リュードベリ原子の状態を特定するためのマイクロ波源として、


Stanford Research Systems(米国)

https://www.thinksrs.com/index.html


増幅器は、


Mini Circuit(米国)

https://www.minicircuits.com/


などでした。業界に明るくないのですが、研究者に聞くところによると比較的研究領域ではメジャーのようです。量子コンピュータ業界をこうした部品メーカーから追っていくのはなかなか大変な気がしましたが、興味がある人や業界で働く方々にとっては大きなビジネスチャンスなのではないでしょうか。以上です。


blueqat社 湊雄一郎