コラム:2022年の展望 量子ハードウェア ⑧ 光量子 USTC、Xanadu、QuiX、etc..


By David Shaw, 「Fact Based Insight」


この記事の原文は、「Fact Based Insight」のウェブサイトからで、許可を得て再掲載しています。原文はこちらから。


2022年の展望 量子ハードウェア ① 概要

2022年の展望 量子ハードウェア ② 超伝導 IBM

2022年の展望 量子ハードウェア ③ 超伝導 Google

2022年の展望 量子ハードウェア ④ 超伝導 USTC,Rigetti,D-WAVE etc...

2022年の展望 量子ハードウェア ⑤ イオントラップ IonQ

2022年の展望 量子ハードウェア ⑥ イオントラップ Quantinuum(Honeywell)、Universal Quantum、Oxford Ionics、etc..

2022年の展望 量子ハードウェア ⑦ 光量子 PsiQuantum




【 USTC Jiuzhang 2.0が始動 】


USTC(中国科学技術大学)は、2020年、Jiuzhangによる量子超越性の発表で登場した。2021年、この結果はさらに計算の複雑さを増し、ある程度のプログラマビリティを導入するために拡張されている[44]。


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- Jiuzhang(九章:世界初の実用的な光子コンピュータ)
紀元前10世紀~2世紀にかけて書かれたと言われる中国の有名な書物「九章算術」にちなんで命名された。初期には、100の出力モードで最大76の出力光子を検出した。現在では、144の出力モードで113の出力光子を検出するまでにバージョンアップしている。
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- USTC vs Google
Jiuzhangの結果は、その正しい解釈をめぐり議論となったが、透明性のある競争科学スタイルが、すべての関係者にとって有益であることを示す素晴らしい例となった。GoogleはUSTCの結果に対し、実験にノイズが存在する場合、「ノイズの多い」ボソンサンプリングなら、古典コンピュータは以前考えられていたよりもはるかに効率的にシミュレーションできる、と返した。現に、理論計算機科学者のScott Aaronson氏が量子優位性テストの指標を、Jiuzhangよりも効率的に再現することができたのである。これに対してUSTCは、Jiuzhangが扱ったデータには、古典的アプローチではシミュレートできない高次の量子相関が存在していた、と反論した。その結果、Scott Aaronson氏を含むすべての関係者が、「ボゾンサンプリング」についての理解を深めることに繋がったのだ。[45]

これは科学的な興味の問題ではない。ノイズの多いNISQ時代の装置で、実用的な量子計算の利点をボソンサンプリングで実証することが、どれほど困難な問題であるかを直感的に理解することができるようになった。
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Jiuzhang 2.0が抱えている本質的な課題は、従来の光学テーブルのセットアップにおいて、ディスクリートコンポーネント(集積化されていない)をベースにしていることにある。この方法には拡張性がないのだ。XanaduやPsiQが採用しているような方法でコンポーネントを統合することが、明らかな道筋だろう。

中国では、過去10年間に半導体製造産業に強力な投資を行っており、USTCはマイナーな参加企業からトップ5プレイヤーへと成長した[46]。同社が拠点をおく合肥市は、中国における300mmウェハーの中心地として注目されており、1 つのNexchip社のファブが稼働中で、他に 3 つの計画があると報告されています[47]。




【 Xanaduは独自の道を歩む 】


Xanaduは2021年にさらに1億ドルを調達し、フォトニック量子コンピューティングに向けて、我が道を歩き続けている。

単一光子ではなく、XanaduはGKP量子ビットを使用している[48]。この方式は、誤り訂正を行う前であっても、光子損失に対する耐性を備えていることが大きな特徴だ。Fact Based Insightでは、Xanaduの焦点はFTQCだろうと予想している。課題となるのは、主要なボトルネックを解消する多重化、誤り訂正の実行に必要な古典処理のサポート(おそらくFPGAによる)などだろう。アドバンテージを得るには、3Dコネクティビティの強化もその一つだろう。さらには、主要なボトルネックにおける多重化、誤り訂正の実行に必要な古典的処理のサポート(おそらくFPGAによる)などがある。



Xanaduはカナダに本社を置くが、欧州のシリコンフォトニクスのエコシステムと強いつながりを持っている。imecとはチップ製造、VTTは超伝導光子検出器について、最近では提携している。


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- Xanadu roadmap
Three processor series in parallel 2021-23: 
X-Series X24, X40, X80; 
XD-Series (100% connectivity) XD4, XD8, XD12, XD40, XD80; 
TD-Series (time domain multiplexing) TD2, TD3; 
5kQ module (by 2024), 
FQTC data centre (2025+); 
Error correction via GKP qubits.
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【 QuiXは販売で優位に 】


QuiXはオランダのスタートアップで、4,8,12モードのフォトニックプロセッサを、他に必要となる周辺制御装置を含めて製造している。これらは、シリコンフォトニクス・プラットフォームを活用することで、優れた低損失の性能を実現してる[49]。同社は実際にハードウェアを販売している数少ない企業の一つであり、商業的に牽引力を強めている。20×20モードのデバイスのテストが成功したと噂があるが、今のところ発売のアナウンスはされていない。


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- QuiX roadmap
20×20 mode (2021), 
50×50 mode (2022), 
computational advantage 2023
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Orca computing社もまた、英国の興味深いフォトニクス・スタートアップだ。同社のアプローチは、より柔軟に光状態を操作する方法について、独自のメモリ技術に重点を置いている。それを標準的な光学部品と組み合わせることで、特徴あるプラットフォームを提供している。UKRIの助成金は、このアプローチの柔軟性が、未来の量子データセンターへの応用を期待してのものだろう。



Duality Quantum Photonics社は、未だ目立たない存在だ。

2人の創業者、Anthony Laing氏とAlberto Politi氏の実績を考えると、彼らの計画が統合フォトニック量子技術の開発に関わることは間違いないだろう(Politiの博士論文「統合量子フォトニクス」は、2008年にこの分野の発端となったものだ。当時の共同指導者はJeremy O'Brien氏だった)。




References



[40] PsiQuantum, Silicon Photonic Quantum Computing – PsiQuantum at 2021 APS March Meeting. 2021 [Online]. Available: https://www.youtube.com/watch?v=WQRmSOKgMPA. [Accessed: 12-Dec-2021]


[41] S. Bartolucci et al., “Fusion-based quantum computation,” arXiv:2101.09310 [quant-ph], Jan. 2021 [Online]. Available: http://arxiv.org/abs/2101.09310. [Accessed: 14-Nov-2021]


[42] “24th Annual Conference on Quantum Information Processing,” 24th Annual Conference on Quantum Information Processing. [Online]. Available: https://www.mcqst.de/qip2021/. [Accessed: 12-Dec-2021]


[43] PsiQuantum, Architectures for fault tolerant quantum computing | QIP2021 Tutorial | Naomi Nickerson. 2021 [Online]. Available: https://www.youtube.com/watch?v=BSZsH4dBBbc. [Accessed: 12-Dec-2021]


[44] H.-S. Zhong et al., “Phase-Programmable Gaussian Boson Sampling Using Stimulated Squeezed Light,” Phys. Rev. Lett., vol. 127, no. 18, p. 180502, Oct. 2021, doi: 10.1103/PhysRevLett.127.180502. [Online]. Available: http://arxiv.org/abs/2106.15534. [Accessed: 12-Nov-2021]


[45] “Gaussian BosonSampling, higher-order correlations, and spoofing: An update,” Shtetl-Optimized, 10-Oct-2021. [Online]. Available: https://scottaaronson.blog/?p=5868. [Accessed: 12-Dec-2021]


[46] “Press Center – Progress in Importation of US Equipment Dispels Doubts on SMIC’s Capacity Expansion for Mature Nodes for Now, Says TrendForce | TrendForce – Market research, price trend of DRAM, NAND Flash, LEDs, TFT-LCD and green energy, PV,” TrendForce. [Online]. Available: https://www.trendforce.com/presscenter/news/20210305-10693.html. [Accessed: 12-Dec-2021]


[47] “合肥晶合集成电路有限公司,” 13-Feb-2018. [Online]. Available: https://web.archive.org/web/20180213021849/http://www.nexchip.com.cn/About/index_124.aspx. [Accessed: 15-Nov-2021]





⑨最後に続く


(翻訳:Hideki Hayashi)

提供:Quantum Computing Report