コラム:2022年の展望 量子ハードウェア ④ 超伝導 USTC,Rigetti,D-Wave etc..

2022年の展望 量子ハードウェア ① 概要

2022年の展望 量子ハードウェア ② 超伝導 IBM 2022年の展望 量子ハードウェア ③ 超伝導 Google

 

【 USTCのZuchongzhiがおこした波 】


USTC(中国科学技術大学)は2021年、「Zuchongzhi」で話題をさらった。公称66Qの超伝導ビットデバイスだ。Zuchongzhi 2.0は56Q、Zuchongzhi 2.1は60Qでランダム回路サンプリングを実行でき、GoogleのSycamoreの実現よりも7Q多い。この結果、計算難易度の世界新記録を達成した。[11; 12]



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- Zuchongzhi
この名前は、中国の天文学者であり数学者であった人物の名前から取られた。西暦480年頃に円周率を正確に計算し、その後800年の間その値を超えることがなかったと言われる。基本的に、GoogleのSycamoreと同じアーキテクチャを採用している。周波数を調整可能なカプラ、iSWAPのようなゲートを備えている。
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さてこれは、USTCがQCのレースをリードしたと言えるのだろうか? Fact Based Insightは、少しニュアンスの違う見方をしている。Zuchongzhiの忠実度統計(99.4% 2Qsim)は、ゲート速度に関してオリジナルのSycamoreより遅いが(24ns vs 12ns)、デッドヒートを繰り広げていると言える。つまり科学的には、ある結果を確認するために環境違いで実験を繰り返した例といえるだろう。


USTCチームは今、Googleが過去2年間に切り開いてきた道のり、つまり実験をいかにして通用の運用に耐えうるデバイスにできるのか、という同じ課題に突き当たっている。新しく製造されたチップで(2.0と2.1の間の読み出しの忠実度)、わずか2ヶ月の方向転換で向上させた驚異的なスピードは、今後我々の期待に対する指標になるだろう。より困難なのは、量子ビットの忠実度を追いかけるのではなく、いかにしてこの分野をリードできるかだ。USTCにしてもGoogleも、彼らが目指す実用化には、未だ充分とは言えない。


Origin Quantum社は、合肥市に拠点を置く量子コンピューティングのスタートアップだ。中国で超伝導技術のスキルベースが成長する現在、利益を得るために適した位置にいるようだ。同社はすでにクラウドで24Qシステムのアクセスをサポートしており、まもなく64Qにアップデートされる。資金調達においても、70億円の評価を受けることに成功し、ユニコーン企業の仲間入りをしている[13]。


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- Origin Quantum roadmap 
64Q 2021, 
144Q 2022, 
1024Q 2025.
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中国における超伝導技術は、山東省済南市に建設中の最新鋭の次世代ナノファブリケーションセンターの恩恵を受けることが期待できる[14; 15]。これは競争が激化する中で、重要なカギになるだろう。


ヨーロッパでは、量子フラッグシップ・プロジェクトである「OpenSuperQ」が、調整可能な量子ビットのアプローチで、初期の5Qおよび7Qの超伝導量子ビットデバイスを開発している。2022年3月に現在の取り組みが終了する前に、20Qのフリップチップ設計にアップグレードする見通しがある[16]。


プロジェクトは当初100Qを目指しており、比べるとそれよりも少ない設定だ。しかしFact Based Insightは、この種の最先端プロジェクトは現実的でなければならず、必ずしも野心的なタイムスケールを守れるかどうかについては重要ではないと考えている。逆にもし、常に守れるのであれば、その野望は低すぎるということだ。同じように直面している困難は、「Zuchongzhi」開発におけるUSTCチームの功績を強調するのに役立っているといえる。



【 Rigetti モジュール化にフォーカス 】


Rigettiは、2021年をラボの内外でエキサイティングに過ごしている。10月にSPAC上場を発表し、量子ユニコーン企業の地位を獲得したことが大きな話題となった。


シングルチップがスケールアップすると、量子ビットの破壊や信頼の低下が問題となってくる。彼らは、このスケーリングの課題をターゲットにしたモジュラー・アプローチの開発を重視している。別々のシリコン・ダイの上に作成した小型プロセッサを、キャリア・チップにフリップ・チップ・ボンディングし、組み込まれているカプラにより、別々のチップにおいて量子コヒーレント相互接続を実現する。さてこのアプローチは、要求を満たす忠実度を維持できるのだろうか?

2021年の結論としては「満たしそうだ」であった。クロスチップのエンタングルメント・レートは、Rigettiのゲート速度(約10 MHz)に匹敵し,忠実度(iSWAPは99.1%,CZは98.3%)は有望なものであった[17].


最終的に、他の多くの企業はこのアプローチを採用することになるのかもしれない。チップサイズの最適なクロスオーバーポイントはまだ確率されていない。Rigettiにとって、忠実度の大幅な向上こそ最重要課題である。



【 D-Wave 分かれた戦略 】


D-Waveは2021年、大きな戦略の拡張を目指し、ゲート型シリーズの導入計画を発表した。その中身はとても興味深いものだった。彼らは材料科学や科学シミュレーションの問題に、ゲート型のアプローチが長期的に有望であることを認めている(この分野の常識と一致するようになった)。しかしまた、長短期に渡り、最適化問題に関して信じるアーキテクチャは量子アニーリングだとして倍増させることも明確にしている(少なくても現在想定されているゲート型に対して)。


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- D-Wave annealing roadmap
5,000Qの「Advantage」 15通りのconnectivity, 

2022:Advantage performance updates
2023/24:Advantage 2 new qubit design
2025:コヒーレンス性の向上により、接続性を改善
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D-Waveのゲート型のコンセプトは、オンチップで多重化制御を行うなど、彼らがパイオニアとなった磁束量子ビットの設計と多層化などの技術を継承している。このことは、ゲート型のアプローチが要求する高い忠実度には適さないため、妥協案なのではないかと多くの人は認識したようだ。しかし彼らには関連する専門家がいる。もしうまくいかないと思うなら、この道を歩むことはないのではないか。


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- D-Wave gate-model roadmap
Phase 1: 多層スタックでの量子ビットの検証
phase 2: 誤り訂正の検証
phase 3: 論理量子ビットの操作デモ
phase 4: スケーラブルなタスク特化型コンポーネント設計
phase 5: 初の統合型汎用プロセッサ
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同じく量子アニーリング技術を追求する企業に、スペインのスタートアップ「Qilimanjaro」がある。欧州でコヒーレント量子アニーラを構築するAVaQusプロジェクトに参加している。



【 新たな参入者は柔軟に次を目指す 】


この分野で、独自の技術で注目を集めているSEEQCは、SFQ(超伝導単一磁束量子)デジタル制御技術で、長期的な可能性を持つスタートアップだ。


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- Single Flux Quantum
このユニークな超電導エレクトロニクス技術により、SEEQCは、高速、低発熱、低電力の古典処理、デジタル多重化、低遅延の量子ビット制御を単一の極低温チップ上に統合している。SFQ回路に基づく高速古典制御ロジック、特に誤り訂正とmagic statesの効率的な生成は、SEEQCの重要な利点となり得る。[19]

- Efficient flip-chips
SEEQCのアプローチの強みは、超伝導量子ビットと超伝導制御電子回路のサイズが似ていることだ。量子ビットは、1つのウェハ/チップに配置され、対応するSFQ制御回路は、同じサイズの別のウェハ/チップに配置されている。これらは、既存の製造プロセスを用いて、別々に製造し、ダイシングし、フリップチップ接合することが可能だ。このような製造の柔軟性とワイヤレス・カップリングの組み合わせは、スケーリングにおいて特に利点となる。[20]
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SEEQCの統合的な制御アプローチは、2021年に3つのUKRI助成金とともに、産業界の共同出資を集めてるほど注目されている。彼らは、複雑なSFQチップを製造できる最先端の社内商業ファウンドリを有しており、チップ製造技術への投資を支援する米国の政治的機運の恩恵を受けている。


IQMは、差別化されたサービスを提供するフィンランドのスタートアップだ。それは、研究機関やHPCセンター向けに、オンサイトの量子コンピュータの構築に特化している。共同設計型のこのようなアプローチは、ER圏やインドなどの独立志向の強いアジア諸国で、ニッチ市場を作り出している。IQMは現在、母国フィンランドで先行していたプロジェクトに続き、ドイツで注目すべきプロジェクトを獲得している[21]。


Bleximoは、米国のスタートアップで、超伝導量子ビットに基づく特定用途向け量子コンピュータの共同設計に重点を置いている。これまで目立たない存在だったが、Q2Bではそのエンジニアリング能力の高さが明確に示された。彼らは、出自により当然ながら、バークレーの研究コミュニティとの密接な関係から恩恵を受けている。[22]


IMPAQTは、研究グループの「セルフビルド」市場をターゲットにした、オランダのコンソーシアムだ。


将来的に拡張性を考えると、おそらくある時点で、別々の希釈用冷蔵庫間に、コヒーレントな接続が必要になるだろう。ETH Zurichはこの原理を実証している[23]。

ヨーロッパにおけるこの技術の開発は,Quantum Flagship QMiCS プロジェクト [16]によって先導されてきた.



References


[11] Y. Wu et al., “Strong quantum computational advantage using a superconducting quantum processor,” Phys. Rev. Lett., vol. 127, no. 18, p. 180501, Oct. 2021, doi: 10.1103/PhysRevLett.127.180501. [Online]. Available: http://arxiv.org/abs/2106.14734. [Accessed: 12-Nov-2021]


[12] Q. Zhu et al., “Quantum Computational Advantage via 60-Qubit 24-Cycle Random Circuit Sampling,” arXiv:2109.03494 [quant-ph], Sep. 2021 [Online]. Available: http://arxiv.org/abs/2109.03494. [Accessed: 19-Nov-2021]


[13] “Origin Quantum Round B Funding.” [Online]. Available: http://zgcco-innovationfund.com.cn/wap/index.php?lang=cn&type=1&id=630. [Accessed: 13-Dec-2021]


[14] “山东省科学技术厅 媒体聚焦 三位‘大咖’看山东:量子科技,山东势头猛成果丰.” [Online]. Available: http://kjt.shandong.gov.cn/art/2021/5/15/art_13364_10288094.html. [Accessed: 03-Dec-2021]


[15] “高新云图|国家高新区云数据服务平台|官方 唯一 权威 便捷.” [Online]. Available: http://www.gaoxinyt.com/content/9695/1/. [Accessed: 03-Dec-2021]


[16] “2nd European Quantum Technologies Conference | Dublin | EQTC 2021,” EQTC 2020 Site Pink. [Online]. Available: https://www.eqtc.org. [Accessed: 12-Dec-2021]


[17] A. Gold et al., “Entanglement Across Separate Silicon Dies in a Modular Superconducting Qubit Device,” arXiv:2102.13293 [quant-ph], Mar. 2021 [Online]. Available: http://arxiv.org/abs/2102.13293. [Accessed: 12-Nov-2021]


[18] “ANNEALING-BASED VARIATIONAL QUANTUM PROCESSORS | AVaQus Project | Fact Sheet | H2020 | CORDIS | European Commission.” [Online]. Available: https://cordis.europa.eu/project/id/899561. [Accessed: 12-Dec-2021]


[19] O. Mukhanov et al., “Scalable Quantum Computing Infrastructure Based on Superconducting Electronics,” 2019, p. 31.2.1-31.2.4, doi: 10.1109/IEDM19573.2019.8993634.


[20] “IQT Fall 2021 – SpotMe.” [Online]. Available: https://us-webapp.spotme.com/0cefc3e49c887710a7532f25419391c5/home-feed. [Accessed: 12-Dec-2021]


[21] “Germany has selected IQM led quantum consortium for HPC. | IQM.” [Online]. Available: https://www.meetiqm.com/articles/press-releases/q-exa-consortium-to-integrate-german-quantum-computer-into-hpc-supercomputer-for-the-first-time/. [Accessed: 12-Dec-2021]


[22] “Q2B 2021 | Practical Quantum Computing,” Q2B. [Online]. Available: https://q2b.qcware.com/. [Accessed: 12-Dec-2021]


[23] P. Magnard et al., “Microwave Quantum Link between Superconducting Circuits Housed in Spatially Separated Cryogenic Systems,” Phys. Rev. Lett., vol. 125, no. 26, p. 260502, Dec. 2020, doi: 10.1103/PhysRevLett.125.260502. [Online]. Available: http://arxiv.org/abs/2008.01642. [Accessed: 03-Dec-2021]



⑤イオントラップ偏に続く




(翻訳:Hideki Hayashi)

提供:Quantum Computing Report