コラム:2022年の展望 量子ハードウェア ③超伝導 Google

By David Shaw, 「Fact Based Insight」


この記事の原文は、「Fact Based Insight」のウェブサイトからで、許可を得て再掲載しています。原文はこちらから。


【 Google 次への飛躍に向けて 】


Googleは、2029年までに数十億ドルをかけて量子コンピュータを開発する予定で、チームの規模を倍増している。また専用のクリーンルームを設置し、短納期でチップを製造できるようになった。[5]


彼らの最初のマイルストーンであったSycamoreチップは、古典コンピュータの能力を超える演算を行い(量子超越性)、この分野をリードしている。そして現在は、2つ目のマイルストーンに向けて、論理量子ビットのプロトタイプ実現が計画通りに進んでいる。具体的には、彼らが好む誤り訂正の手法(surface code)が、グリッドサイズを大きくしたエンコーディングに移行することによって、系統的に誤りを抑制できることを実証したいと考えている。


そのために、Sycamoreアーキテクチャを「random circuit sampling」と呼ばれる人為的な問題に特化したものから、surface codeの実装へとアップグレードを実施した。ここにはネイティブ実装の2Qゲートを、問題に対しはるかに有用なものにすることが含まれている。


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- iSWAP-like → CZ 
調整可能な周波数のトランズモン型ビットに拘っているおかげで、新しいCZゲートは、古いゲートよりもやや遅くなっている(14ns → 26ns)。それでも忠実度(99.4%2Qsim)がほぼ同じであることは、まさに快挙と言えるだろう(同時動作における2Q忠実度のより厳しいテストを引用すると、Googleは以前、その最高の個々のゲートペアで99.9%の性能を実証していることも重要な点だ[6])。

- Readout & reset
[3000ns, 96.2%]から[600ns, 98.1%]へと、読み出しスピード・忠実度を大幅に改善した。新しいマルチレベルなリセット・オペレーションは、リークエラーの修正も可能としている。
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この読み出し性能の向上は、誤り訂正に不可欠なもので、そのことはアイドル状態の量子ビットが、驚くほど大きなボトルネックになることが分かっているからだ。これまでGoogleは、1次元の「Repetition Code(繰り返し符号)」の実装に成功しているが、これは2次元の「surface code」の完成に向けた途中経過と見做すことができる[7]。


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- Lambda 
Googleは、符号の距離が大きくなるにつれて、誤りがどれだけ効果的であるか測定するパラメータの重要性を強調している。1より大きいΛは、誤り訂正が機能していることを示しているが、Λ10であることが設計のスイートスポットだと主張する。これより低い値では、物理と論理のビット比率が非現実なほど増加してしまい、これより高い値では、相対的に価値が低くなってしまう。このポイントを達成するために、目指す「surface code」プロトコルは、99.9%以上のゲート忠実度が必要であると考えている。また測定とリセットの間のアイドル時のエラー率も大幅に改善されるべきだと[7]- Error Bursts
エラーとなる理由は様々だが、通常誤り訂正は、誤りが小さく相関がないことを前提にしている。しかし量子ビットでは、状態が破壊されるようなリークエラーや、複数のビットに影響する相関性の高いエラーがあり、管理をとても難しいものにしている。さらにはスケールアップのための現実的な設計のためには、宇宙線や潜在する放射能からの影響も考慮しなければいけないと指摘している[8]。
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Hartmut Neven氏は、「古典的な能力を超えてnature誌に論文を書いたことは一つの成果だが、長期間に渡り確実に動作し、クラウドサービスとして提供できるということは、まったく別の話だ」[5]と述べている。これは悲観的な話ではなく、システムのスケールアップに伴い、キャリブレーションの自動化などといった現実的な課題への対処がいかに難しいかを示している。このことは今後、同じような問題に直面する他の人々への指標となるだろう。


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- Google roadmap 2029年までに
100Q (論理的量子ビットのプロトタイプ)
1,000Q (論理量子ビット)
10kQ (タイル構成の論理モジュール)
100kQ (エンジニアリング・スケールアップ)
1MQ (誤り訂正量子コンピュータ)

surface codeプロトコルによる誤り訂正
望ましい測定基準:同時動作における2Qゲートの忠実度。
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QuTech社は、調整可能な周波数トランズモン型ビットの研究もおこなっているが、素晴らしい忠実度を実現している。彼らは、ラボのテスト装置でSNZ CZ 2Qゲートを実装し、99.93%の忠実度を達成した。これは量子技術にオープン・アクセスなクラウドの未来にとって良い兆候だろう。

MITはまた、調整可能なカプラを備えた高忠実度のiSWAP 2Qゲートを、99.87%の忠実度で実証している[10]。


現在まで直面してきたキャリブレーションの問題は、この分野でUKRI(UK Research and Innovation)が資金援助している研究にも反映されることになっている。スタートアップのRiverlane社が率いるAutoQTプロジェクトは、AI技術を活用して、量子ビットを回転させ続けることを追及している。






References



[5] Google Quantum AI, Day 1 Keynote – Quantum Summer Symposium 2021. 2021 [Online]. Available: https://www.youtube.com/watch?v=VGGHG1a98vA. [Accessed: 12-Dec-2021]


[6] Google Quantum AI, Quantum hardware: Recent progress and outlook – Quantum Summer Symposium 2021. 2021 [Online]. Available: https://www.youtube.com/watch?v=VvHh6GoNhy8. [Accessed: 12-Dec-2021]


[7] Z. Chen et al., “Exponential suppression of bit or phase flip errors with repetitive error correction,” arXiv:2102.06132 [quant-ph], Feb. 2021 [Online]. Available: http://arxiv.org/abs/2102.06132. [Accessed: 05-Oct-2021]


[8] M. McEwen et al., “Resolving catastrophic error bursts from cosmic rays in large arrays of superconducting qubits,” arXiv:2104.05219 [quant-ph], Apr. 2021 [Online]. Available: http://arxiv.org/abs/2104.05219. [Accessed: 15-Nov-2021]


[9] V. Negîrneac et al., “High-fidelity controlled-Z gate with maximal intermediate leakage operating at the speed limit in a superconducting quantum processor,” Phys. Rev. Lett., vol. 126, no. 22, p. 220502, Jun. 2021, doi: 10.1103/PhysRevLett.126.220502. [Online]. Available: http://arxiv.org/abs/2008.07411. [Accessed: 18-Nov-2021]


[10] Y. Sung et al., “Realization of high-fidelity CZ and ZZ-free iSWAP gates with a tunable coupler,” Phys. Rev. X, vol. 11, no. 2, p. 021058, Jun. 2021, doi: 10.1103/PhysRevX.11.021058. [Online]. Available: http://arxiv.org/abs/2011.01261. [Accessed: 17-Nov-2021]




④へ続く



(翻訳:Hideki Hayashi)

提供:Quantum Computing Report